☆ DARKNESS WITHIN 2: THE DARK LINEAGE ☆
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製作/販売 Zoetrope Interactive / Iceberg Interactive         公式サイト 
デモ仕様 272MB    限定されたエリアをプレイ可能
概  要
 トルコのインディーズ制作会社Zoetrope Interactiveからのアドベンチャーゲームで、全三部作予定の第二弾。ゲームのストーリーはH.P.ラヴクラフトのクトゥルー神話を元にして制作されている。

 第一作であるDarkness Within: In Pursuit of Loath Nolder(左側SS)は2007年に発売されており、評価の方は55.5%と総合的には奮わなかったが、アドベンチャーゲーム系の掲示板では高く評価する人も結構見掛けたゲームである。私自身は未プレイ。

 一作目の代理店だったLighthouse Interactiveが無くなってしまったので、この二作目は新たな代理店からのリリースとなる。




 今回興味を持ったのはゲームのスタイルを変更したからというのがその理由。前作は一人称視点のADVであり、設定された地点間のみを移動出来て、各地点で視点を360度マウスで移動させて背景内のオブジェクトをクリックして行くという一般的な形式であった。それを今回はフル3D化しており、マップ内を一人称視点で自由に動き回れるというスタイルに切り替えている。一番雰囲気が似ているのはPenumbraだが、クトゥルー神話物という点でCall of Cthulhu: Dark Corners of the Earthとも似た雰囲気を持っているゲームである。


 英国では先日発売されたばかりで、これから欧州圏では順次発売される。ダウンロード販売としてはImpulseで発売中。北米圏でのリテール版については不明である。


 時代設定は2011年。主人公は前作と同じく刑事のHoward E. Loreid。今回は彼自身の血塗られた過去の謎に迫るという内容になっており、彼がArkhamend(ラヴクラフトの小説に登場する架空の地名Arkhamを更にもじった架空の町)を訪れるところから始まる。サブタイトルは“闇の系譜(血統)”とでも訳すのが適当か。


動作環境
HARDWARE 必要環境 推奨環境
CPU 1.8GHz Pentium or AMD -
MEMORY 512 MB (1GB Vista) -
VIDEO VRAM 256MB, Shader Model 3.0 -
SOUND DirectX 9.0c 互換 -
対応OS XP/Vista/Windows 7
DirectX 9.0c以上要


 PhysXを使用しており、どのバージョン以上かは不明だがドライバのインストールが必要。VRAM 256MB + Shader Model 3.0以上が必要というのは、現時点でのアドベンチャーゲームとしては最高レベルの負荷と言える。(SM 2.0が必要で3.0を推奨というのがトップクラスで、このレベルのゲームすら滅多にない)。よってアドベンチャーゲームのファン層への売り上げが心配という気もする。


 発売されたばかりでサポートがまだ機能していないので、どの様な問題があるのかは現時点では分からない。自分の環境(XP SP3, E6850, MM 4GB, Geforce GTX 260, V197.45, SB X-Fi)では動作に問題は無かった。

 設定用のランチャーが用意されており、FOVやカスタム解像度等の設定が行える。


GAMEPLAY  先にゲームの概要について簡単に説明。前作と同じく三段階の難易度(Standard, Detective, Senior Detective)を用意しており、それによってプレイヤーをアシストする機能がオンやオフになるという仕組み。このデモでは選択出来ないので、どの難易度に設定されているのか不明である。

 この難易度設定と密接な関わりを持つのが引用システムと呼ばれる物で、ラブクラフトの世界を背景にしているだけあって登場する文章量が相当に多く(少なくとも前作では)、その中から解決のヒントを見付けないとならなくなっており、それを文章から発見するのにこれを用いる。難易度が一番下のStandardだと自動的に重要な箇所にアンダーラインが引かれるのだが、そうでない場合には自分でペンを使って文章の重要だと思われる部分にアンダーラインを引かないとならない。それが正解だった場合には、新たな情報が得られたり、主人公が何かに気が付いたという風になって(PDA等に書き込まれる)、話が進展するという方式。
 ただ前作では「文章量がやたらと多いのでこのアンダーラインの場所を見つけるのが大変」とか、このアンダーラインや主人公の気付きによって「それまでは反応が無かった箇所が調べられるようになったりするので非常にややこしい」といった批判も出ていたようだ。

 主人公が単独で行動する孤独で閉じた世界ではなく、アウトドア等の一般的なエリアも探索の舞台に含まれる。敵味方としてのNPCも多数登場し、選択会話システムが用意されている。

 ゲーム性としてはあくまでもアドベンチャーゲームであり、アクションを要求されるシーンは無いそうである。敵を攻撃したり、ステルス等で逃げたり隠れたり、何等かのタイミング操作を要求されたりする事は無い。その点でPenumbraとは異なっている。3D空間を自由に動き回れるようにしたのは臨場感を高める為で、実際にその場所に存在しているかの様な感覚を醸し出す事で、そこで体験する恐怖がよりリアル且つダイレクトに伝わってくるようにするのが狙いとなる。その為に多少なりともアクション要素を求める人には向かないゲームかも知れない。


*セーブは任意の地点で行えて回数も制限無し。F5がクイックセーブでF6でロード。
*表示文字スピード変更可能
*ヒント機能あり。ONだと自動的に特定の箇所でヒントアイコンが使える様になる仕組みらしい。

 通常のADVはマウスだけで操作可能だが、このゲームはフル3DなのでWSADキーによる移動や、Walk/Runの切り替えが可能になっている。よってFPSゲーマーには馴染み易い。右クリックでインベントリー画面に切り替わったり、アイテムを拡大して観察したり出来る点は一般的なADVと同様。カーソルは対象物に応じて“Take”や“Examine”という風にガイドが表示される。


 肝心のデモの内容の方だが、動き回れるエリアは相当に狭い。ただ“鍵”を発見するまでは順調だったのだが、それを使う“仕掛けの在る場所”を発見するまでに時間を費やしたので、クリアには1時間位掛かった。(要は「ここがクリック出来る」という場所を発見するのが大変だった)。同じく詰まった方は、じっくりとあらゆる場所を観察する事をお勧めする。デモはある場所で死ぬと終わりとなりデスクトップに戻される。製品版ではここを回避する謎解きが用意されているが、デモは強制的にここで失敗して終わりという意味らしい。


 デモのインドアのシーンは暗く、ガンマ調整は用意されているのだが、意図する明るさに調整するガイド画面は無し。常に暗闇を移動するゲームでは無いようだが、ホラー要素を重視するなら調整がないのは疑問。明かりにはランプとフラッシュライトが用意されており、ランプは広いエリアを時間無制限に照らせるのに対して、フラッシュライトはバッテリー式となり、範囲は狭くなるがより遠くまで明るく照らせるようになっている。

 探索方法で注意すべき点としては、しゃがまないとマウスカーソルが変化しないポイントが在ったり、同じくそうしないと見えないとかクリック出来ないアイテムが在ったりする。リアルな設定とは言えるが、随時しゃがんで探索もしないとならないという点で見逃しが生じる可能性はある。


 グラフィックスを売りにしているがこれは確かに綺麗。このデモは場所的にPenumbraを連想させるが、こちらの方が後発で必要環境が高いだけあって見た目が美しい。これだけ綺麗な空間をちゃんと動き回れるというのは確かに大きなプラス点になりそうだ。演出として別撮りのムービーではなく、イベントシーンでは主人公の視点のままで自動的に操作が行われる。強い恐怖を受けた場合にはDCotEの様に恐怖エフェクトで画面が歪んだりするようになっており、この表現もなかなか良く出来ていると感じられた。

 一方で宣伝されていたPhysX物理エンジンについては期待外れというか、あまりゲームプレイにかかわる様な使い方はされていない様な感触を受けた。軽い物はクリックで掴めるが投げたりは出来ないし、大きなオブジェクトはWSADキーで動かせるのみ。積み重ねて台を作ったりとかの操作も無さそう。通常のADVでは椅子や箱等のオブジェクトを動かすと、動かす前の画が動いた後の画に切り替わるだけだが、そこをリアルに動かせるようにしているだけで、謎解きではなくリアリティの為だけに導入したかの様に思える。

 演算の方も精度は高くなく、持ったオブジェクトが他のオブジェクトに重なってしまったり、落とした物は開けた引き出し等には干渉せずに透過してしまったりと、見た目としてちょっと問題あり。

GRAPHICS

SOUND
 グラフィックスの設定は何項目か負荷に応じて切り替えられる。最高設定ではちゃんと光源の移動に応じてリアルタイムでソフトシャドウの描画が行われる様になっており、光の中を塵が舞うザラついたノイズ表現も用意されている。ライティングの表現としてはADVの中ではトップレベルと言えよう。

 ただし2Dの背景画像を使うADVでは徹底して描き込める為にディテールが高いのに比較して、このゲームではポリゴンで構成されているオブジェクトが多いので、ディテールという面では劣るという印象もある。だがこれはフル3D化と高度なライティングの代償として仕方のない点だろう。


 サウンドはアンビエント音にBGMも加わっており、このデモで使われている物は良い出来だと感じられた。

感  想  個人的にはアドベンチャーゲームも好きなので、アクション要素を含まないという点はさして気にならず、描画と雰囲気が良いので結構気に入った。アクションを求める人には向かないかも知れないが、ホラーが好きならば試してみる価値はあると思う。

 しかしデモではエリアが狭く行える事が限られているので、ゲームプレイ自体は別にしてデモその物の出来はあまり良いとは言えず、もっと長い物にして欲しかったというのが正直な所。製品版の全容はハッキリとしないが、評判を見て特に悪くなければ購入候補としたいと考えている。



 購入確率 80%
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